もの思いにしずんでいたフランシスコの目に、あれはてた小さな教会が入りました。このサン・ダミアノ教会の屋根はかたむき、かべはところどころくずれて、あなが開いています。ひっそりと糸杉の森の斜面に立つ教会に、フランシスコは、なぜか心がひかれるのを感じました。
古びたドアを開けて中に入ってみました。目はきゅうに暗い世界に入って、ぱちぱちまばたきをし、はだはしずんだ冷たい空気にふれて、ちょっときんちょうしました。うしろからさしこんでくる光を受けて、自分のかげが十字架の形にゆかにうつっているのを、フランシスコは知りませんでした。
……
そこにフランシスコはひざまずいて、しばらくじっとしていました。いろいろのことが思い出されて、つぎつぎに心の中を横ぎっていきます。
……
「神さま、どうしたらいいのでしょう。わたしに教えてください……。」
フランシスコは、そのようにして長い時をすごしました。神さまが教えてくださるという約束を信じて、待っていたのです。やがて、大きななぐさめに心がみたされるのを感じました。
とつぜん、そのとき、
「フランシスコ、見るとおりくずれかけているわたしの家を、建てなおしなさい。」
という声が聞こえてきました。はじめは自分の耳のまちがいではないかと、フランシスコは思いました。ところが、聞こえたのです。
「フランシスコ、見るとおりくずれかけているわたしの家を、建てなおしなさい。」
その声は、くり返しいったのです。フランシスコは、びっくりしました。教会の中には、だれもいなかったからです。
いいえ、十字架の上に、イエス・キリストがおられました。目を大きく開いたイエスさまが、じっとフランシスコを見つめておられたのです。
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『みんなのきょうだい フランシスコ』(女子パウロ会)より引用